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2025.06.30

棚卸作業中の業務停止を回避し業務再開を早める販売管理システム活用法

棚卸は在庫管理の正確性を保つために不可欠な業務ですが、その実施中に販売や出荷といった日常業務を停止せざるを得ない企業も少なくありません。特に販売機会が絶え間なく発生するECや小売の現場においては、棚卸による一時的な業務停止が売上や顧客満足度の低下につながる恐れがあります。本記事では、販売管理システムを活用することで、棚卸中も業務を継続し、作業終了後には迅速に業務を再開できる仕組みについて紹介します。現場に即した工夫や実際の企業事例を交えながら、棚卸と販売活動の両立を図るための実践的なアプローチを解説していきます。

【目次】

1.棚卸作業による業務停止が企業活動へ与える深刻な影響とは

2.販売管理システムを活用した棚卸業務の効率化と業務継続手法

3.実際の活用事例に学ぶ業務再開を早める販売管理システムの工夫

4.まとめ

棚卸作業による業務停止が企業活動へ与える深刻な影響とは

棚卸作業は、実際の在庫数量と帳簿上の数値を照合し、不一致を解消するために定期的に行われます。しかし、その間、出荷や受注業務を一時的に停止する必要がある企業も多く、これは事業にとって大きなリスクとなります。

たとえば、販売のタイミングが重要な季節商戦の時期に棚卸を行えば、その間に逃した販売機会は取り返しがつかない損失になり得ます。また、業務を止めた分だけ、棚卸後の再開時に受注や在庫データの処理が集中し、ヒューマンエラーが起きやすくなります。このような業務の滞留や混乱は、現場の負担だけでなく、取引先や顧客との信頼関係にも悪影響を及ぼしかねません。

販売管理システムを活用した棚卸業務の効率化と業務継続手法

従来は棚卸を行うために「業務を止める」ことが前提とされてきましたが、現在では販売管理システムを活用することで、業務を継続しながら棚卸作業を行うことが可能になっています。販売管理システムとは、在庫の移動や受発注、売上などの情報を一元管理するソフトウェアで、最新のシステムはリアルタイムでのデータ更新にも対応しています。

これにより、棚卸対象の商品だけを一時的に販売停止状態にし、他の商品については通常通り受注・出荷業務を継続する、といった柔軟な運用ができるようになります。さらに、現場の作業者がスマートフォンやタブレットを用いてリアルタイムで数量を入力できるようになれば、紙にメモを取って後から転記するといった非効率的な工程も不要になります。このように、棚卸作業と販売業務を分離して並行処理できることが、販売管理システムの大きな利点です。

実際の活用事例に学ぶ業務再開を早める販売管理システムの工夫

中規模のアパレル企業A社では、かつて年に2回の棚卸を実施するたびに、最大2日間もすべての業務を停止していました。この期間は売上がゼロになるだけでなく、業務再開後に大量の注文処理が集中し、出荷ミスや在庫の記録ミスが相次いでいたそうです。そこで同社は販売管理システムの導入を決断し、棚卸作業と日常業務を両立できる仕組みを構築しました。

具体的には、棚卸専用の操作モードを用意し、対象となる商品のみを棚卸中に管理できるようにしました。さらに、作業担当者はスマートフォンから在庫数を直接入力し、入力内容は即座にシステムに反映されるため、作業終了後に集計やチェックを行う時間も大幅に短縮されました。その結果、棚卸作業の所要時間は約40%削減され、同時に業務再開時の混乱もほぼ解消されたといいます。

このように、販売管理システムの導入と業務設計の工夫によって、棚卸に伴う業務停止の問題は着実に改善可能です。

まとめ

棚卸作業は、業務の正確性と信頼性を保つうえで避けて通れない重要なプロセスです。しかし、従来のように業務を全面停止して行う方法では、販売機会の損失や現場の混乱といった大きな代償を伴います。こうした課題を解決する手段として、販売管理システムの活用が非常に効果的です。

リアルタイムでの在庫情報の更新や、棚卸対象商品の一時的な制御、作業のデジタル入力による効率化など、システムの機能をうまく活かせば、棚卸と販売業務を無理なく両立させることができます。業務を止めることなく精度の高い棚卸を行えるようになれば、企業の運営効率は飛躍的に高まり、顧客満足度の向上にもつながるでしょう。

今後、棚卸は「止めてやるもの」から「止めずに進めるもの」へと変わっていくはずです。その第一歩として、販売管理システムの見直しと運用改善に取り組むことが、企業の持続的な成長に寄与していくことでしょう。

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