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2025.11.07

複数拠点の在庫をリアルタイムで管理し、配送の効率化を図る方法

企業の物流や販売活動が広域化・多様化するなかで、複数の拠点に点在する在庫をどのように把握し、最適に運用するかは大きな課題となっています。製造拠点、倉庫、販売店舗、さらにはEC倉庫など、在庫が分散していると、どこに何がどれだけあるのかを正確に把握できず、欠品や過剰在庫といった問題が頻発します。これらの問題は、販売機会の損失や不要な在庫コストの増大を招くだけでなく、配送の非効率化にもつながります。
こうした状況を改善するためには、在庫をリアルタイムで管理し、拠点間で情報を共有する仕組みが不可欠です。そして、その情報をもとに配送計画を最適化することで、リードタイムの短縮やコスト削減を実現することができます。
本記事では、複数拠点の在庫をリアルタイムで管理し、配送の効率化を図るための具体的な方法を3つの観点から解説します。

【目次】

1.在庫管理システムで複数拠点の在庫をリアルタイムに一元管理する方法

2.在庫管理システムとIoTで入出庫データをリアルタイムに反映する方法

3.在庫管理システム導入によるAI活用で在庫配置と配送効率を向上

4.まとめ

在庫管理システムで複数拠点の在庫をリアルタイムに一元管理する方法

複数拠点の在庫をリアルタイムで把握するためには、まず「情報の一元化」が前提となります。多くの企業では、拠点ごとに在庫管理が独立しており、現場担当者がエクセルや紙の台帳で管理しているケースも少なくありません。このような管理方法では、他拠点の在庫状況を把握することが難しく、問い合わせや報告に時間がかかります。また、在庫数が更新されるまでのタイムラグが大きく、正確な情報をもとに意思決定することができません。
この課題を解決するためには、在庫データをリアルタイムで共有できる在庫管理システムの導入が有効です。クラウド型のシステムを活用すれば、インターネット環境があればどこからでも最新の在庫状況を確認できます。たとえば、東京の物流センターで入庫が行われた瞬間に、大阪や名古屋の営業所でもその情報を即座に確認できるようになります。これにより、余剰在庫を抱える拠点と欠品リスクを抱える拠点を迅速にマッチングし、在庫の偏りを防ぐことができます。
また、システムによる一元化は「見える化」だけでなく、業務効率の向上にも寄与します。出荷処理、棚卸し、移動在庫の管理など、従来は拠点ごとに重複していた作業を共通化することで、全社的な標準運用を実現できます。特に、販売管理や生産管理システムとの連携を図ることで、受注から出荷までのプロセスをシームレスに統合でき、在庫精度とスピードの両立が可能となります。
在庫情報の一元化は単なるシステム導入ではなく、業務全体の設計を見直すきっかけにもなります。拠点間の情報共有がスムーズになれば、各部署の判断や対応が早まり、結果的に顧客満足度の向上にもつながります。

在庫管理システムとIoTで入出庫データをリアルタイムに反映する方法

在庫情報を正確に保つためには、現場で発生する入出庫や移動のデータを、いかにリアルタイムで反映できるかが重要です。いくらシステムが整備されていても、データ更新が人の手作業に依存している限り、遅延や入力ミスは避けられません。そこで注目されているのが、IoT技術や自動データ連携の活用です。
たとえば、バーコードやRFIDタグを利用すれば、商品の入庫・出庫・棚移動といった動きをスキャンするだけで自動的にシステムに反映できます。これにより、在庫数量や所在の誤差を最小限に抑えることができ、現場の作業時間も大幅に削減されます。さらに、RFIDを用いた在庫管理では、複数の商品を一括で読み取れるため、大型倉庫や多数のSKUを扱う現場でも効率的です。
また、倉庫内の機器やセンサーから得られる情報をクラウドに自動送信することで、在庫の状態を常に最新に保つことができます。温度や湿度といった環境情報を合わせて管理することで、品質管理を強化することも可能です。こうしたIoT技術を導入することで、在庫情報の信頼性が高まり、拠点間の連携がよりスムーズになります。
さらに、他のシステムとのデータ連携も重要です。販売管理システム、物流管理システム、会計システムなどと在庫データを自動で連携させることで、入力作業の重複を排除し、データの整合性を維持できます。たとえば、受注データが登録された瞬間に、最寄り拠点の在庫状況を自動で確認し、最適な出荷拠点をシステムが選定する仕組みを構築することも可能です。このような自動化は、人的ミスの防止だけでなく、在庫引き当てや配送手配のスピードを飛躍的に向上させます。
IoTとシステム連携によるリアルタイム更新は、単に現場の利便性を高めるだけでなく、経営判断の精度を支える基盤にもなります。常に最新のデータに基づいて需要予測や補充計画を立てることで、在庫コストを最小限に抑えながら、顧客ニーズに即応できる体制を構築することができます。

在庫管理システム導入によるAI活用で在庫配置と配送効率を向上

複数拠点の在庫をリアルタイムで把握できるようになった後は、その情報をどのように活用するかが次のステップとなります。特に重要なのが、在庫の最適配置と配送の効率化です。どの拠点にどの程度の在庫を持たせるか、どの拠点から出荷するのが最も効率的かを判断することで、全体のコストとリードタイムを大きく削減できます。
たとえば、需要が集中するエリアに近い拠点へ在庫を事前に移動しておくことで、配送距離を短縮し、出荷リードタイムを削減できます。逆に、特定拠点に在庫が偏っている場合は、リアルタイム情報をもとに他拠点から補充を行い、欠品を防ぐことができます。このような在庫の再配置を効率的に行うためには、AIによる需要予測や在庫最適化アルゴリズムを活用することが有効です。販売履歴や季節要因、地域特性を分析し、どの拠点にどれだけの在庫を置くべきかを自動で提案することで、担当者の負担を軽減しつつ、精度の高い運用を実現できます。
また、配送の効率化においては、ルート最適化の仕組みが重要です。複数拠点から顧客へ配送する場合、どの倉庫からどの順番で配送するかによって、時間とコストに大きな差が生まれます。ルート最適化システムを活用すれば、交通状況、距離、配送量、車両台数などの条件をもとに最適な配送計画を自動で立案できます。これにより、ドライバーの負担を減らすだけでなく、燃料費や人件費の削減にもつながります。
さらに、顧客への納期遵守や緊急出荷への対応力も向上します。たとえば、顧客から急な注文が入った場合でも、リアルタイム在庫情報と配送ルートを組み合わせることで、最短時間で対応可能な拠点を即座に特定し、迅速な出荷を実現できます。こうした体制を整えることは、競合との差別化にもつながります。
在庫のリアルタイム共有と配送最適化を組み合わせることで、単にコストを削減するだけでなく、スピードと信頼性を兼ね備えた物流体制を構築できるのです。

まとめ

複数拠点にまたがる在庫をリアルタイムで管理し、配送を効率化するためには、単なるシステム導入にとどまらず、業務全体の最適化が求められます。まず、在庫情報を一元化することで、拠点間の情報格差をなくし、全社的な見える化を実現します。次に、IoTや自動データ連携を活用して、現場のデータをリアルタイムで反映させ、精度とスピードを両立させます。そして最後に、その情報をもとに在庫配置や配送ルートを最適化することで、コスト削減と顧客満足の向上を同時に達成します。
今後、物流コストの上昇や人手不足がますます深刻化する中で、リアルタイム在庫管理と配送最適化は、企業の競争力を左右する重要な要素となります。データを活用した在庫運用の高度化こそが、効率的かつ柔軟なサプライチェーンを築く鍵と言えるでしょう。

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