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2025.12.09

在庫管理システムを使った棚卸し精度の向上と時間短縮の実践法

棚卸しは企業の在庫状況を正確に把握するために欠かせない業務ですが、現場では「時間がかかる」「人手が足りない」「数が合わない」といった課題が絶えません。特に製造業や小売業、卸売業など、多品種の商品を扱う企業では棚卸し作業が数日に及ぶことも珍しくなく、担当者の負担は非常に大きいのが現実です。
こうした課題を根本的に解決する手段として注目されているのが、在庫管理システムを活用した棚卸しの効率化です。従来の手作業によるカウントやエクセルでの記録管理から脱却し、デジタルツールを組み合わせることで、棚卸し精度の向上と作業時間の大幅な短縮が実現できます。
本記事では、在庫管理システムを活用して棚卸し業務を効率化するための具体的な実践法について、3つの観点から解説します。現場で実際に導入を検討している企業や、すでに運用中のシステムをさらに活用したい方に向けて、効果的なポイントを紹介します。

【目次】

1.在庫管理システムで日常在庫の精度を高め棚卸し誤差を最小化する方法

2.在庫管理システムとモバイル端末連携で棚卸し時間を大幅に短縮する方法

3.在庫管理システムで循環棚卸しを実現し棚卸し作業の効率化と精度を両立

4.まとめ

在庫管理システムで日常在庫の精度を高め棚卸し誤差を最小化する方法

棚卸し精度を高めるためには、まず「日常的な在庫情報の精度」を上げることが前提となります。システムがなければ、入出庫のたびに手書きで記録し、エクセルへ転記するという流れになりやすく、この段階で人的ミスが発生します。入庫漏れや出庫の記録忘れがあると、実際の在庫とシステム上のデータが食い違い、棚卸しの際に大量の差異が生まれます。
在庫管理システムを導入することで、入出庫の記録がリアルタイムに更新されるようになります。バーコードやQRコードを利用すれば、商品をスキャンするだけで自動的にシステムへ反映されるため、記録ミスをほぼ完全に防ぐことが可能です。現場での作業がスピーディになり、誰がいつどの商品を操作したかが履歴として残るため、トレーサビリティも確保できます。
また、システムを通じて在庫の状態を常に最新に保つことができるため、棚卸しの際に「大きなズレを確認して修正する」といった手戻りがなくなります。実際、日常的なリアルタイム在庫管理を行っている企業では、年次棚卸し時の誤差が1%未満にまで低下したという事例もあります。棚卸しのために膨大な時間を費やしていた企業が、システム導入後は確認作業中心に切り替えられるようになり、全体の作業効率が大幅に改善されます。
つまり、棚卸し精度を上げる最初のステップは、棚卸しそのもののやり方を変えることではなく、「普段の在庫データを正確に保つ仕組み」を整えることにあります。在庫管理システムはその基盤となるツールとして、現場の精度を底上げする役割を果たします。

在庫管理システムとモバイル端末連携で棚卸し時間を大幅に短縮する方法

棚卸し作業の時間短縮を実現するうえで、モバイル端末やハンディスキャナの活用は欠かせません。従来の棚卸しは、紙のリストを見ながら一つひとつ商品を確認し、手書きで数を記入し、後からデータ入力を行うという流れでした。この方法では二重入力の手間や転記ミスが多く、作業効率が非常に低いのが難点でした。
在庫管理システムをモバイル端末と連携させることで、現場で直接データを入力できる環境が整います。スマートフォンやタブレットに専用アプリを導入すれば、バーコードやQRコードをスキャンするだけで、在庫数がリアルタイムにシステムへ反映されます。これにより、紙のリストや手書き記録が不要となり、作業スピードが大幅に向上します。
さらに、モバイル端末を使うことで、作業者ごとの進捗状況を可視化することも可能です。システム上でどの棚が棚卸し済みで、どこが未完了かが一目で分かるため、チーム全体で効率よく分担ができます。複数人で同時に作業してもデータが重複することはなく、即時集計ができるため、棚卸し後の集計作業も不要になります。
ある卸売業では、在庫管理システムとハンディターミナルを導入したことで、これまで3日かかっていた棚卸しを1日半に短縮することに成功しました。担当者による数え間違いも減少し、在庫差異の調整作業がほとんど不要になったといいます。このように、モバイル端末とスキャン機能を組み合わせることは、棚卸し作業の効率化と精度向上の両立に直結します。
重要なのは、システムを「使いやすくする」ことです。現場の担当者が直感的に操作できるUIや、スキャン速度の早い機器を選定することで、導入効果はさらに高まります。

在庫管理システムで循環棚卸しを実現し棚卸し作業の効率化と精度を両立

棚卸しを効率化するためには、「年に一度の大規模な棚卸し」から脱却し、定期的な循環棚卸し(サイクルカウント)を取り入れることが有効です。循環棚卸しとは、在庫の一部を日常業務の中で定期的に確認し、全体を分割して管理する方法です。たとえば、A倉庫は毎週月曜日、B倉庫は隔週金曜日など、在庫を小分けにして計画的に確認することで、1回の棚卸し作業にかかる負担を分散できます。
在庫管理システムを活用すれば、この循環棚卸しを効率的に運用できます。システム上で棚ごとの在庫リストを自動抽出し、担当者へタスクとして割り当てることで、棚卸し対象が明確になります。さらに、システムに入力された結果は自動的に集計・反映されるため、月次や四半期ごとの在庫精度を常に一定レベルに保つことが可能です。
このようなサイクル運用は、業務負担の軽減に加えて、経営上の意思決定にも好影響を与えます。年に一度の棚卸しでは、経営数値が「過去の状態」を基にしたものになりがちですが、循環棚卸しを行えば、常に最新の在庫データを経営判断に活用できます。結果として、発注や生産計画の精度が上がり、在庫過多や欠品のリスクを減らすことができます。
さらに、他システムとの連携も重要です。販売管理システムや生産管理システムと在庫管理システムを連携させることで、入出庫情報が自動的に反映され、棚卸しデータの整合性が保たれます。これにより、倉庫現場だけでなく、営業部門や経理部門も常に最新の在庫情報を共有できるようになります。情報の一元化によって、棚卸しが単なる「作業」ではなく、企業全体の「情報精度を維持する仕組み」へと進化します。

まとめ

在庫管理システムを活用した棚卸しの精度向上と時間短縮は、単なる作業効率化にとどまらず、企業全体の在庫運用レベルを引き上げる施策です。リアルタイムな在庫情報の更新により誤差を減らし、モバイル端末やスキャン機能の活用で現場作業をスピードアップし、さらに循環棚卸しを取り入れることで、負担を分散しながら精度を維持できます。
これらを組み合わせることで、棚卸しは「大変なイベント」から「日常的な業務の一部」へと変わります。データの正確性が高まれば、発注や生産計画、財務報告など、経営のあらゆる判断がより迅速かつ正確に行えるようになります。棚卸しの効率化は、現場の負担を減らすだけでなく、企業の競争力を高めるための重要な一歩と言えるでしょう。

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