CASE

製造業

F社様

生産管理システム開発事例

  • 受託開発

開発の背景

F社様では、長年にわたり複数の商品群を扱う中で、商品ごとに異なる業務フローやシステムが存在し、全社的な業務効率やデータ整合性に課題を抱えていました。これらの背景を受け、同社ではすべての業務を一元的に管理できる統合型の生産管理システムの構築を強く求めるに至りました。

商品別で分断された業務システム

F社様が取り扱う商品群ごとに業務フローや管理方法が異なっており、実質的にそれぞれが独立した業務運用となっていました。結果として、部門間・商品間での情報連携が困難であり、業務の属人化や重複作業が発生していました。

部分的なシステム化と手作業による運用の限界

現在のシステムでは、受注から指示書作成まではある程度システム化されているものの、発注・仕入以降はExcelベースの手入力に依存している状況でした。一部にはシステム化された領域もあるものの、業務全体を一貫して支える仕組みにはなっておらず、手作業によるミスや入力漏れ、転記の手間が業務負荷を増大させていました。

改修不能な既存システムの継続運用

従来のシステムは社内で開発されたものでしたが、担当者がすでに退職しており、内部仕様が不明確な状態です。そのため、項目の追加や計算式の変更といった些細な改修すらできない状況にあり、現場の要望に応じた改善が一切行えないまま運用が続いていました。

外部ベンダーによる構想の頓挫と再出発

こうした状況を受けて、過去に外部のベンダーが関与し、3年をかけて「手組+パッケージ」の構成で基本設計を進めていました。しかし、業務内容が複雑でパッケージでの対応が困難であったこと、コストや運用負担の問題も重なり、担当者が途中で離脱する形でプロジェクトは中断されました。
この経緯を受け、F社様では外部ベンダーが残した設計資料を活用しつつ、パッケージではなく手組みによるフルスクラッチ開発が妥当との判断に至りました。

統合型システムへのニーズ

上記の背景を踏まえ、F社様では以下のような統合的な業務基盤の実現を強く求められています:

商品や部門に関係なく、見積・受注・発注・仕入・出荷・売上・売掛・買掛までを一気通貫で管理できる仕組みの整備

二重入力や属人作業の排除、情報のリアルタイム化による業務の効率化と正確性の向上

将来的な機能追加や業務変更にも柔軟に対応できる、保守性・拡張性に優れた設計

開発における取り組み

全社業務の可視化と棚卸し

既存業務を商品ごと・部門ごとに詳細にヒアリングし、バラバラだった業務プロセスを一度全体で見える化。

手作業・Excel運用部分の洗い出しを行い、統一すべき入力項目やデータ項目を整理。

外部ベンダーの設計資料を活かした再構築方針

過去に3年間かけて作成された外部ベンダーの基本設計資料を再評価・再活用。

パッケージ導入ではなく、手組(フルスクラッチ)による柔軟なシステム構築を選択。

必要に応じて設計内容を見直し、現場とのギャップを調整。

段階的なシステム統合の推進

すべての業務を一度に切り替えるのではなく、業務単位・商品単位で段階的に統合。

初期フェーズでは「見積・受注」「指示書」「発注・仕入」のフローを中心に着手。

次フェーズで「出荷・売上」「売掛・買掛」管理を含む全体統合へと進行予定。

運用現場と密な連携

実際に業務を担う担当者と定期的なレビューを行い、業務に即した設計と機能要件のフィードバックループを形成。

「使いやすさ」と「正確な管理」の両立を目指し、UIや入力画面も細かく調整。

保守性・拡張性を意識した設計

データベース設計や業務ロジックの分離により、将来の変更・機能追加にも対応しやすい設計を採用。

外部エンジニアや将来的な人員交代を見越し、ソースコードや業務フローのドキュメント化も徹底。

開発における課題解決

既存業務の複雑性と属人化

商品ごとに異なる業務フローが長年の運用で個別最適化されていたため、これらを標準化することで、にさらなる効率化と全体最適の実現を目指すことができた。

指示書の内容や製造ルールは個人の経験や勘に頼っていた部分が多かったが、これらを明文化することで、組織全体で共有・継承できる基盤を築けた。

既存システムのブラックボックス化

既存システムの開発担当者がすでに退職していたため、ソースコードの解析や仕様の再確認を通じて、システムの構造を理解するプロセスを踏むことができた。

改修が難しい状況であったが、新旧システムの整合性を慎重に見極め、柔軟なシステム設計を目指す出発点となった。

紙・Excel文化からの脱却

製造現場や管理部門では長年、紙やExcelを活用した運用が定着していた、これらの実績を尊重しながら、デジタル化による業務効率化とデータ活用の可能性を広げる取り組みを進めた。

「入力が増えるのでは?」「現場でPCは使えない」といった現場からの率直な意見を受け止めたことで、より現実的かつ使いやすい仕組みの設計につながり、スムーズな移行を実現する糸口となった。

外部設計資産の活用と現場目線での再構築への挑戦

過去に外部ベンダーが長期にわたり設計を進めた成果物が残されており、それらの資料は新たな構築に向けた出発点として有効活用された。

設計書と現場運用との間にはギャップが見られたものの、それを丁寧に検証することで実運用に即した最適なシステム像が明確となり、再構築の方針を固める貴重な機会となった。

パッケージに頼らず、業務に真に適したシステムを一から構築するという決断は大きな挑戦であったが、その分柔軟性と拡張性の高い仕組みづくりに繋がる重要なステップとなった。

ユーザー部門とのすり合わせ

現場担当者ごとに異なる視点や要望があり、要件定義では各部署の声を拾い上げ、より実用的で現場に即したシステム設計につながった。

操作性や帳票フォーマットなど「見た目」へのこだわりは、細かなUIや出力調整を重ねることで現場満足度の高い仕組みを実現できた。

業務全体の一元化に向けた段階的アプローチと構想力の強化

見積・受注・指示・発注・仕入・出荷・売上・売掛・買掛までの全業務を一元化するという明確なゴールがあったことで、全体最適を見据えた設計思想が求められ、システム全体の整合性と連携性に対する意識が高まった。

フェーズを分けて着実に開発を進める中で、常に全体像を意識しながら構成・設計を保ち続けたことで、長期的な視点でのシステム構築力が磨かれた。

テストと移行の対応

商品や業務ごとに多様な条件分岐が存在したため、幅広く網羅的なテストケースを構築することで、システムの信頼性を高めることができた。

旧システムやExcelとのデータ移行では、変換ルールや項目の精査を通じてデータ整備の重要性を再認識し、品質の高いデータ基盤を構築することができた。

実運用を止めずにシステム移行する必要があり、並行稼働や段階移行も慎重に設計。

導入後の効果

業務の一元化による作業効率向上

商品種別ごとにバラバラだったシステムが統合され、1つの画面・フローで一貫管理可能に。

受注〜出荷〜売上〜請求までの流れがシステム上で連携し、入力・確認・転記の手間が大幅に削減。

各部門間のやりとりもスムーズになり、業務時間を約30〜40%短縮(社内試算)。

ペーパーレス・Excel脱却

指示書・発注書・納品書・帳票などが自動出力され、Excelや紙ベースの帳票が大幅に削減。

ミスや転記漏れが減り、品質管理の精度も向上。

属人化からの脱却

作業指示や仕様情報、履歴などがシステムに集約され、誰でも同じレベルで判断・対応可能に。

ベテラン社員のノウハウがマスタ・ルールに反映され、新人教育の効率もアップ。

製造現場のリアルタイム進捗管理

製造工程の進捗がリアルタイムに反映されるため、営業・管理部門との情報共有がスムーズに。

遅延リスクへの事前対応が可能となり、納期遵守率の向上につながった。

販売・購買・在庫の見える化

受注状況、発注残、仕入予定、在庫残数などがシステムにより一目で把握可能に。

部材やチップ芯の在庫管理が効率化され、無駄な発注・不足のリスクを回避。

経営数値の即時把握

売上・粗利・仕入・在庫・売掛・買掛などがリアルタイムで把握可能になり、経営判断のスピードと正確性が向上。

月末・月初の集計作業も短縮され、管理部門の負荷も軽減。

システム運用・改善の自走化

項目追加・帳票レイアウト変更など、社内でもある程度のメンテナンスが可能な構成に。

外部に依存せず、業務変化に柔軟に対応できる体制を確立。

まとめ

F社様では、長年にわたり多品種の商品を扱う中で、商品ごとに分かれた業務システムやExcelベースの手入力作業が非効率や属人化を招いていました。さらに、既存システムは連携がなく、開発者の退職により保守や機能追加も困難な状態に。過去にはパッケージ導入も検討されましたが、業務との適合が難しく断念。最終的に、現場ヒアリングと資料をもとにゼロからの“手組み”による再構築を選択しました。

新たに開発された生産管理システムは、見積から売掛・買掛までを一気通貫で管理可能な統合システムです。これにより、業務の標準化・ペーパーレス化・リアルタイムでの進捗把握が進み、入力作業も大幅に削減。属人化のリスクが低減され、部門間の連携も強化されました。さらに社内で柔軟に改修できる設計としたことで、変化に強い運用基盤が整い、F社様は今後のさらなる業務改善と迅速な経営判断を見据えています。

 

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